2025.02.22
イベントレポート 「ディープタイムウォーク in 熊野古道」

2025年2月14日、雲一つない青空の下、和歌山県西牟婁郡すさみ町の熊野古道大辺路長井坂にてディープタイムウォークを実施しました。
昨年12月から東京で2回実施してきたディープタイムウォーク(DTW)ですが、今回は、和歌山 Well-being Month 様のご協力で、世界遺産の熊野古道での開催が実現しました。実現のため、ご協力くださった皆様、参加者の皆様に心より感謝申し上げます。
当日参加者は、23名で、和深川神社付近で趣旨説明と自己紹介のチェックインを行いました。ルートは、「海の熊野古道」と呼ばれる、熊野古道大辺路の「長井坂西口」から「長井坂東口」まで歩き、最後は見老津駅近くの海辺で振り返りのチェックアウトを行いました。
チェックインの様子。
一歩が50万年であることを確認中。
長井坂に突入します。
すると、突然の急斜面。初めての道に戸惑いつつも一歩ずつ歩みを進めました。
一キロ弱の登坂を足元に注意しながら進みますが、徐々に汗ばみ始め、疲労の表情が見え始めます。
ですが、平坦な道にたどり着くと、そこには絶景が…!
太平洋に浮かぶ小島や半島が見渡せる。自然の雄大さを目の当たりに。

長井坂の「段築(版築)(だんちく/はんちく)」(和歌山県世界遺産センターHPより)
途中、江戸時代には完成されていたという先人の知恵と技術の結晶、「段築」を一歩一歩進む。
段築とは、道幅を確保するため、尾根を土手状に整形する土木技術のこと。
道を平たんにしたり土砂の流出を防ぐ役割がある。
全長54mにわたる長井坂の段築は、巡礼者のため整備され、ウバメガシに囲まれている(聖地リゾート!!!!!HPより)。
絶景ポイントがいくつかあり、そこで時々休憩しつつ、自然を存分に感じながら歩きました。
お気に入りの木を見つけて一緒に写真を撮ったりもしました。
木々に囲まれて、自然をめいっぱい体感しました。
イベント後に実施したアンケートによると、イベント満足度や参加後のエコロジーへの意識・幸福度の変化が全体的に高く、世界遺産のパワーを私自身も存分に五感で感じながら歩くことができました。
東京では、公園で実施したこともあり、平坦な道を穏やかな気持ちで一歩一歩を感じながら歩んできましたが、険しい熊野古道では、自然の荒々しさなど、新たな自然の一面を体感することとなりました。前野先生のLUCA(Last Universal Common Ancestor)、生物学における「最終普遍共通祖先」についての解説も加わり、美しい自然のなか、先人が作った熊野古道を、生と死の循環を意識しながら進みました。0.1ミリの人生の奇跡や地球・生命・自然など、生きとし生けるものとのつながりを確認したことで、地球環境、祖先や当たり前の日常への感謝が参加者アンケートに見られました。
ゴール地点は海のすぐそばでした!
紀州梅の栽培をされている農家さんたちも参加しており、LUCAに基づくと、生きとし生けるものはすべて親戚、つまり梅も親戚だ!という気づきが、かなり強く心に響いたとのことです。
熊野古道がふるさとという参加者は、古道に落ちた松ぼっくりを見て、幼少期に楽しく遊んだ記憶を思い出して幸せな気持ちになったと語りました。
<ディープタイムウォーク実施地の条件>
和歌山には南紀熊野ジオパークがあり、パワースポットでDTWを開催できたことをとてもありがたく感じました。今後も様々な場所でDTWを実施して、ウェルビーイングの輪を広げていきたいです。以下は、実施場所についての条件です。
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・4.6kmを平坦な土の歩道でなるべく曲がり角なく歩ける。一直線でも、ぐるっと廻ってスタート地点付近に帰ってくるのでもOKだが、同じところは通らない。
・しかも、集合、解散がしやすい場所であると嬉しい。
・4.6kmの間、できれば人工物が見えないと嬉しい。車の音も聞こえないといい。地面はもちろん、アスファルトやコンクリートではなく、土が望ましい。
・最初の600メートルは海ができる前なので(もちろん生物はいないので)できればゴツゴツした火山岩の地形で、植物が生えていなくて川や海が見えないところだとベスト。
・最初の600メートルを歩いたところで海が誕生するので、急に海か川が見えてきて、そのあとはできればわりと海か川が見えるルートだとベスト。
・可能ならば最初の2.6kmはずっとゴツゴツした岩か土の大地で緑がないとベスト。葉緑体誕生前なので。岩場の海岸でもよい。2.6km(緑の植物の誕生)の地点から4.6kmは緑が豊かだと良い。
・最後の最後で街に出るとか、人が多いなど、人工物がある感じであってもよい。現代なので。ただそれは最後の1メートルくらいであるとベスト。
・ゴールまで4km〜2.4kmと、ゴールまで2km〜540mのところはひたすら歩くので、心地の良い自然を感じられると良い。
・10回以上、説明しながら歩くので、他の歩行者の邪魔にならずに参加者に説明をする場所があると嬉しい。
・途中、1回か2回、トイレ休憩があると良い。
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細かいですが、いつか上記の条件に合うような場所で実施できたら良いなと思っております。生きとし生けるもののしあわせを願うディープタイムウォーク、今後も様々な場所で実施し続けていきます。
言い忘れましたが、DTW3回目の私個人の変化としては、このウェルビーイングな体験を誰かに伝えたくなり、帰宅してさっそく大切な人に伝えたり、お仏壇のお掃除をしたり、手を合わせるようになりました。0.1ミリのいのちの奇跡を再確認し、心からの感謝の気持ちを抱くようになったからだと思います。
<3回のディープタイムウォークを振り返って>
イギリスでのDTWの実践はエコロジーへの意識を高め、環境保護への具体的な行動を促す側面が強調されています(Harding and Woodford, 2024 )。
ですが、今回、東京と和歌山での実践によって、DTWが地球や生命、自然、祖先や他者とのつながり感と感謝の念を高め、参加者の幸福感に寄与している側面を見出すことができました。これは、DTW実践が、参加者のウェルビーイングを高める方法としての可能性を示しているように思います。
「いのち」について深く考えさせられるDTW。今後の実践で、DTWのさらなる可能性を考察し続けられたらと思います。和歌山でお会いできたみなさん、ありがとうございました!
一般社団法人 ウェルビーイングデザイン
宮地 眞子