2020.07.08
「幸せ」の本質をとことん追求することで繁栄していく(GCストーリー株式会社 西坂勇人さん)
屋外広告物(サイン)の課題を解決する施工事業をはじめ、介護事業、組織デザイン事業を手がけるGCストーリー株式会社。
2020年のホワイト企業大賞、そして「働きがいのある会社ランキング」で5年連続ベストカンパニーを受賞するなど、社員が幸せに働ける会社として定評があります。
ホワイト企業大賞の受賞理由の一つに「業績という量と、人間力という質。物心両面のバランスが如実に感じられる」とあるように、「社員の幸せが第一」という理念を持ちながら好調な業績を上げ続けています。
業績を伴いながら社員の幸せを考える経営の秘訣と、コロナのような未曽有の状況が起こった際にそれをどう捉えたらいいのかを、代表取締役社長の西坂勇人さんに伺いました。
社名に込めた「本質的な幸せ」を追求する想い
「幸せ」には様々な定義がありますよね。前野先生の4つの因子もそうですし、チョコレートを食べるのも幸せだし、人にもよるし、その時のステージによっても違うというのをまず前提として思っています。
その上で、幸せには種類があるということを土台として思っています。「ヘドニア・フロー・ユーダイモニア(人々の幸福総量)」この3つが混ざり合いながらそのタイミングタイミングで欲的な幸せと、ワクワクして没頭している幸せと、社会的意義を感じられるような幸せなどがフェーズによって変わっていくことだなと理解しています。
ただ、あまり多様性を持たせると組織として分散してしまいます。
例えば「お金を儲けることが幸せ」と「人のためになるのが幸せ」を両方フラットに扱ってしまうと難しくなるので、僕の会社としては社名にもなっているGrowth for Contribution(貢献のための成長)。「人の役に立つために自分が成長する」ことがベーシックな考え方になっています。
自分が得をすればいい利己的な考えを全面的に否定するわけではありません。ただ、自分のことよりも人のことを考えた方が、もしかしたら本質的に人は幸せなんじゃないかな、ならばそっちを目指していきたいねという想いがGCストーリーのベースになっている気がします。
純粋に「幸せでありたい」とずっと思っていました。
お金を稼げばそれでいい、とそこで思考停止している人たちがいたり、みんなで集まって居酒屋で愚痴を言っているぐらいなら辞めたらいいんじゃないのかとか、結婚して幸せになるはずがお互いにストレスと感じているとか、いろんな矛盾が世の中には蔓延しているというのはずっと思っていました。
そこで自分なりに本質的なことってなんだろうと考えたんです。
一番最初の経営スタイルは体育会系に近く、でも心は通じてるみたいな、そういう人間関係の幸福度を追求していたんですよね。それはそれで楽しかったのですが若い子たちの中にはそれじゃイヤという人たちが出てきました。それなら集まってくれた社員が一番求めていることと、世の中のバランスを取るために、今のスタイルに変わってきた感じです。
昔からお金に興味がなかった
僕は幸いなことに昔からお金に興味がなかったんです。
お金があると意思決定をする際に惑わされるはずなんですよね。
「本質は何か?」を考える時に、お金に興味がないことはすごく恵まれたポテンシャルだと思っています。
順番ってすごく大切で、お金に興味はないけれど幸福には興味があるわけです。みなさんの「幸福を追求しててお金がついてくるの?」という疑問の根っこには、だってお金ないとやっていけないじゃないですか、っていう話をしている気がしています。でも「別にそんなことないんじゃないですか」と僕は思うんです。
それは「キャンプ場に行く時に水洗トイレがないと嫌だから行けない」って言っているのと同じ気がするんですよ。キャンプ場に行くことの方が重要ですよね。どうしても水洗トイレが欲しければ作ればいいだけの話で、お金がないと生きていけないという大前提、なんでそれを作っているんですか?というのは意外に重要な気がするんですよ。
幸せとお金の関係もそうで、なんで「幸せ」と「お金」を両立させられるんですか、なんでキャンプ場と水洗トイレをバランスさせられるんですか、水洗トイレがなくても大丈夫じゃないですか、キャンプ場に行って幸せになりましょうよ、と(笑)。
「こだわり」を捨てていく
「なぜそこまでお金にこだわるのか?」が疑問です。
僕はサラリーマンをしていた29歳まで年収300万円ぐらいで、独立して3年間ぐらい給料0でした。会社が黒字になったのはたぶん35歳ぐらいです。結婚してから起業したんですが、給料0でも結婚して子供も出来たし、お金なんかなくても全然幸せじゃないかと思っていました。これは一番重要だと思うんですよ。とはいえお金が必要な人もいっぱいいるらしく、僕にはそれはよくわからないけれどそれなら稼いだ方がいいのかなと。水洗トイレ作っとく?ぐらいな感じなんです。水洗トイレにこだわっていたらいつまで経っても本当にやりたいことが出来ないですよね。それがないと不安だ、というよりは、何もなくても不安じゃないっていう心を作った方がよっぽどいい気がしますね。
社員に対してのあるべき姿としては、自分はお父さんであろうと思っています。
もし社員が辞めたいと言ってきたら、言っていることが逃げだったりごまかしていて不幸になりそうだと思ったら止めるし、それでいいんじゃないかと思ったら勧めます。水洗トイレとは会社をうまく運営することなんですよ。だから子供たちみんなを幸せにすることが先にあって、会社を上手くいかせる話が後にこないと本質からずれますよね。ただ、水洗トイレの部分に関しては僕は全く興味がないんです。お金と違うから社員が辞めるのは悲しいですよ。ただ、「辞めるな」と言うのはその子の幸せを純粋に祈っているのかそうじゃないのか、自分を見つめ直すというのはやりますね。
毎月行われる、おにぎりの会。社員が集まり、部署や役職関係なく、ご飯を食べながら熱く語り合います。途中で行われる決意表明も、お互いのモチベーションを刺激する場となっています。(GCストーリー㈱HPより)
逆境はギフト
幸福は「自分の心をどう作っていくか」です。楽しそうだというモ―ドになっていたら楽しくなるので、外部環境というのは関係ないですね。
生まれながらにしてすごく幸福で、一生幸福でい続けられるかっていうと、やっぱり多少は苦労はしなくちゃいけないなと思っています。人の痛みを知るとかね。悲しいことに出会うことなんかはやっぱり0にはならないかなと。結局は人って苦労して強くなってやさしくなって幸せになるものかなと思っています。そうじゃない人って見たことがないですね。ユーモの方での研究でも、どちらかというと苦しみがあったからこそ心が作られるみたいな話で結論づいてるんですよね。僕もそうだなと思っていて、やっぱり悲しいことや辛いことは人生で多少あって、そこから心が作られていくんだろうなと思っています。
みんな幸福になることが目的だとすると、大変な目に遭うことは神様からのギフトだと思うんですよ。
周りに困っている経営者の人たちは実際いて、そういう人たちが相談に来てくれてたりしているんですが、彼らにも「いいねえ」って言ってます(笑)
(そう捉えられる人とそうでない人の差は)心じゃないですかね?
今コロナで大変だって言ってるのって結局、死ぬかもしれないって話は置いておくと、経済的に大変になるかもしれないって話だとすると、水洗トイレがなくなるって話ですよね。なんでそんなに深刻な話してるの?5年後には、「あの時西坂さんとあんな話ししてたよね。人生あれがなかったら腐ってました」って言うだけなんですよ。みんな深刻ぶってお互いに「大変だよね、そうだよね」って言ってると本当にそんな感じになってくるので、今「いいね」って話をしたほうが楽になりますよね。
水洗トイレがないといけないって囚われてるからですよ。例えば結婚しないと幸せになれないとか、お金がないと幸せになれないとか、別にそんなことないのに、何かがないとだめだって囚われている。そのこだわりを勝手に作って、その囚われによって苦しみを自分で作る。人間って全部そういう構造なんですよね。でもなかなか手放せないこともわかってるんです。手放せれば楽になれるんですけどね。「囚われ」って人を四角で囲うって書くじゃないですか。自分を四角で囲ってそれで身動きが取れなくなるんです。
「物心両面のバランスをとる」とは?
僕のキャラとしては、囚われというものが何もないんです。一番最初に入社したうちの社員が中卒で元暴走族だったんですが、それを言うと「えー」って眉間にしわ寄せたりする人もいるじゃないですか。でも僕は常識的なものの見方とか囚われがないので、何でもOKだし、それが土台となっているというのはあるかもしれません。だから僕は「こうあるべき」みたいなのは嫌いですね。方向性をちゃんと作るために、研修をしたりそういう場になるようにしたりしています。社員も70人とか80人になって、しかも僕は今もう会社にほとんど来ていないんです。僕がおおざっぱだから心理的安全性が担保されるかっていうとそういうことは起きないので、それをどうしていくかというのを仕組みにしていってるというのはあるかもしれませんね。
個人が金持ちになることを生きる目的にしているから会社を上手くいかせる、なんてまさかないじゃないですか。それと同じで、会社が売上と利益を上げるということは、その向こうに何があるかってことなんです。
一時期、稲森和夫さんの盛和塾に行っていたんです。物心のバランスをとるにはどうしたらいいですかっていう話に関して一番言いたいのは、だから水洗トイレが必要だって言ってるのは間違いじゃないですかっていうのと、大切なことはキャンプに行くことであり、キャンプに行って水洗トイレはなかったけれど経営はずっとしていく。ただ、社員をたくさん抱えるってことになった時に社員にお金をあげなくちゃいけない。会社って収益を上げないと社員を守ってあげられない、でもそれが目的ではないですよ。っていうのをすごく言いたいです。
みんなで幸せになることを考えた時にどうやらお金がないとだめな人もいるらしい。お金を稼ぐことをやろうと思い、そこで盛和塾で3~4年は「どのようにに売上と利益を作っていくものなのか」は真剣にやりましたね。簡単に言うと管理会計の領域なんですけど、管理会計みたいな物事の利益を出していくための仕組みはまったく土台がないわけじゃないし、それがちゃんと機能している状況の中でバランスを取っていくというのはやってはいますね。
年に一度の忘年会は、内定者が企画してくれます。一年を労い、互いに感謝を伝え合う場です。(GCストーリー㈱HPより)
「みんなが幸せ」であるために乗り越えていくこと
目指すところはみんなが幸せになればいいなと思ってます。
そのために、組織に囚われているところを人類が乗り越えないといけないと思っています。あいつはどこどこの会社だから、あいつはこの会社だからとか言っているのはおかしいですし。組織に属すると人は所属している組織以外の人を排除したくなります。そういう特性を持っている人類の限界を乗り越えないといけないよね、とは思ってますね。そこから作り出されているネガティブな言葉がすごく多いと思うし、そこを乗り越えられないと人類がこの先幸せになれないですから。
人類全体が永続するためにそこを人間として乗り越えないといけないっていうのは思っていて、そのためにGCストーリーっていう会社の境界線みたいなものをいかに溶かしていく。
自分が独立してそこからお金をもらうとかそういう話じゃなくて、溶けてみんなで生きていくわけじゃないですか。そこを切り離して考えるから変に深刻になるんですよね。それを国単位でやってるからすごく不幸なことが起きるし、じゃあそれを会社っていう単位で人類は乗り越えることが出来るのか、ということはチャレンジしていきたいなと思っています。
幸せの4つの因子診断
?「人の役に立つことが幸せ」という考えがあるからこそ、『ありがとう』と感謝が沸き他者と信頼関係が築いていける
? Growth for Contribution、貢献のために自身が成長できる環境があるから『やってみよう!』とチャレンジできる
?一見、大変だと思われるような状況になっても、それをギフトと捉えてみることで『なんとかなる』という前向きと楽観の気持ちが生まれる
?自ら作り出しているこだわりを手放し、自分にとっての幸せとは何かを理解しすることで、『ありのままに』いられて確かな幸せへとつながっていく
西坂さんご自身の経験と、「自分にとっての幸せとは何か」を本質的に追及する姿勢によって、社員のみなさんが誇りを持ちながらパフォーマンスを発揮できる環境が作られているのだと感じました。
西坂さん、どうもありがとうございました!
【GC ストーリー 株式会社】
所在地:東京都江東区
設立:2005年6月20日
スタッフ数:80人
事業内容:施工事業、介護事業
https://gc-story.com/
奈代
インタビュー/小宮沢奈代