2024.10.17
前野隆司 講演参加レポート:Zen2.0 「地球のウェルビーイング 〜世界の平和のためにいま私たちにできること〜」
はじめに
2024年10月11日㈮・12日㈯に北鎌倉の建長寺にて開催された禅とマインドフルネスの国際カンファレンス「Zen2.0」。[1]
1日目の午後には前野先生が「地球のウェルビーイング 〜世界の平和のためにいま私たちにできること〜」というテーマで講演されました。ボランティアとして会場にいた筆者の前野隆司 講演参加レポートです。
1. Zen 2.0
2017年より鎌倉にて開催されている禅とマインドフルネスの国際カンファレンス「Zen 2.0」。今年も北鎌倉の鎌倉五山第一位の建長寺さんで、10月11日・12日秋晴れの中、開催されました。
第8回目の今年のテーマは、「大地に坐す~Touching the Earth~」様々な社会問題が蔓延る不確かな世界で、禅やマインドフルネスを実践しながら、地球と自己との関係を見直す機会を提供します。
1.2. 内容
例年ご登壇いただいている前野先生ですが、今回は「地球と自己との関係を見直す」というテーマに対し、「地球のウェルビーイング 〜世界の平和のためにいま私たちにできること〜」という題目でご講演されました。
具体的には、先生がこの夏に9日間の短期研修で訪れた、イングランド南西部の小さな村トットネス(Totnes)にある「シューマッハ・カレッジ」でのご体験をシェアしていただきました。世界平和のために、個人が実践できる「非暴力・不服従」の考えについて、参加者全員がどのように行動に移せるかを考えるきっかけとなりました。
写真:Zen 2.0 公式フェイスブックより
次節からは、以下の内容に注目しながらレポートしていきます。
- シューマッハカレッジとは?:前野先生のご体験のシェア
- アクティビティ:シューマッハ・カレッジでのアクティビティを体験してみよう!
- 我々へのメッセージ:「非暴力・不服従」
2 シューマッハカレッジ
2.1. シューマッハカレッジとは?
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著書、“Small is beautiful” にて、「資本主義の成長は人類と地球に多大な犠牲を払わせた」と主張した経済学者のE.F.シューマッハの名前と思想を受け継いで、イギリスの思想家サティシュ・クマールらが始めた大学院です。
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サティシュ氏からのメッセージ Schumacher College in the words of Satish Kumar
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EF Shumacher(1973)”Small Is Beautiful: A Study of Economics As If People Mattered”
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「ディープ・エコロジー」、つまり、自然を利用する人間中心の価値から、生けとし生けるものに固有の価値があることを認める考え方[2]に基づいた学校。
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「ディープ・タイム・ウォーク」という、ガイド付きウォーキング体験についても、ご紹介いただきました。ディープ・タイム・ウォークは、参加者が地球の46億年の歴史全体を表す大学付近の田園地帯を4.6キロ歩く学習体験です。その目的は、参加者に地球の膨大な年齢を体感させることで、環境に対する意識を高めることだそうです。[3]
46億年=4.6 km1億年=100 m100万年=1 m人類誕生 20万年前=20 cm農耕革命 1万年前=1 cm産業革命 250年前=0.25 mm人生 100年=0.1 mm
2.2. シューマッハカレッジでの授業をみんなで体験しよう!
アクティビティとしては、世界平和のためのダンス、May All Being be well and happy をみんなで歌ったり、瞑想の時間を持ったりしました(瞑想中、途中でにこっとスマイルする時間もあり)♪ May All Beings be well and happy / “Return to Love” – Dance of Universal Peace
May all beings be well and happyMay all beings be free from strifeMay all being return to lovePeace be with you forever more
日本語訳:
「すべての生きとし生けるものが、健やかで幸せでありますように。すべての生きとし生けるものが争いから解放されますように。すべての生きとし生けるものが愛に還りますように。平和が永遠にあなたとともにありますように。」
この歌詞は、仏教思想に基づいているとのことで、具体的には、テーラワーダ仏教の「慈経」内の、「生きとし生けるものが幸せでありますように」sabbe sattā bhavantu sukhitattā”. [6]「慈悲の心」が連想されます。
3.世界平和に向けて:「非暴力と不服従」
そのようなみんなで歌ってにこっとする楽しいアクティビティの後は、マハトマ・ガンディーの提唱した「非暴力と不服従」について考える時間となりました。インドの独立運動に大きな影響を与えた思想ですが、非暴力、すべての生きとし生けるものに対して、愛と敬意をもつこと、そして、問題の根本的解決にならない暴力ではなく、非協力や抵抗によって、良心のもとに行動することの大切さを改めて認識しました。
サティシュのメッセージとしては、環境問題・戦争・貧困や格差・テクノロジーへの過度な依存といった社会問題にも、ガンディーの「非暴力・不服従」の思想が活かせるとのことです。この精神は、大規模な抗議活動だけでなく、私たちの小さな行動一つ一つからでも実践可能です。前野先生は、例としてペットボトルを使用しないことからと仰っていましたが、一人一人がディープエコロジーの気持ちで、日々の行動を見直す必要性について、考えさせられる時間でした。
4.まとめ
前野先生がシューマッハカレッジ訪問後、大変残念なことに、シューマッハカレッジは「毎月多額の損失を被っている」との理由で、閉校することが決まりました。[7] このようなタイミングのいま思うのは、シューマッハカレッジが長年学生に訴えてきたメッセージを、我々もしかと心に留め、日々の行動を見直したいということ。そして、私は今、誰かとディープ・タイム・ウォークをしながら、自分と地球との関係について、語り合いたいという気持ちでいます。みなさんは、地球に生きとし生けるもののウェルビーイングのために、私たちが今できることは何だと思われますか?
写真:筆者撮影
一般社団法人 ウェルビーイングデザイン
武蔵野大学しあわせ研究所 客員研究員
宮地 眞子
脚注
参考一覧
[2] Britanica: https://www.britannica.com/topic/deep-ecology (2024/10/17 閲覧)
[3] ディープ・タイム・ウォークについての論文:Harding Stephan and Woodford Robert. (2024) “The Deep Time Walk – How Effective Is It?” Journal of Sustainability Education. Vol. 29. ISSN: 2151-7452.
ディープ・タイム・ウォークの補助教材としてカードやアプリなどもあるようです!
[5] モンテッソーリ教育とは?https://sainou.or.jp/montessori/about-montessori/index.html (2024/10/17 閲覧)
[6] テーラワーダ教のパーリ語の「慈経」(Metta Suttam)より:https://j-theravada.com/world/sutta/sutta-06/ (2024/10/17 閲覧)
[7] ① 資金援助をしてきたダーティントントラストからのお知らせ (2024/08/29) https://www.dartington.org/dartingtons-schumacher-college-closes-academic-courses/
② BBC「大学の突然の閉鎖に対する怒り」 (2024/08/31) https://www.bbc.com/news/articles/cged8vqenrlo (2024/10/17 閲覧)
[8] シューマッハカレッジ公式ホームページhttps://campus.dartington.org/schumacher-college-2024/ (2024/10/17 閲覧)